
Sam Orchard BOW Trustees ディレクター
Trevor Brehaut BOW Trustees ディレクター
ガーンジー政府から認可を受けた信託会社。国外の企業や資産家の資産管理を得意とし、法人や信託の設立からその管理まで幅広く対応する。管理業務を行う場合は単にペーパー上の管理者となるのではなく、その業務や信託の内容に主体的に関わり、全てを理解した上で管理するスタイルを取る。慎重でありつつも表面だけではなく内容を吟味して判断してくれるので、イレギュラーなスキームでも対応してくれるフレキシブルな信託会社。
Q. ガーンジーはKKRのファンドがあったり、多くの業種で法人税がゼロ%であったりなど、低税率国として有名です。その分法人を持つ事に関するレギュレーションも厳しいと思いますが、いかがですか?
Sam そうですね。厳しいというか、私たち自身が様々な詳細なチェックを行う必要があります。大きくいくつかのポイントがありますが、まずひとつ目はサブスタンスルール(実在性に関するルール)です。
低税率国だという理由で、実在性のないペーパーカンパニーを作って低税率の恩恵を受ける事はできませんから、重要なルールです。
Q. 具体的にはどういう場合実在性がないという判断になりますか?
Sam 例えば取締役会はガーンジー国内で行わなくてはならないというルールがありますが、これは外国から取締役が飛んで来て、取締役会をガーンジーでやれば良いというわけではありません。取締役の多くがガーンジーに在住していないと実在性がないという判断になります。
他にも、オフィスがありスタッフがいて、そこで実際のビジネスが行われている事が重要です。会社の住所だけガーンジーに置いて経営は海外からというのはNGです。
Trevor サブスタンスルールはEU諸国からの要望が影響しています。EU諸国の人達がガーンジーを使って税逃れをされては困るので、厳しく管理するよう要求され、どんどんその内容も厳しく変わって来ました。ガーンジー政府としても透明性を重視しているので、他国の要望に従って制度を整えています。
Q. 例えばそのサブスタンスルールに則る形で、外国人や外国企業がガーンジーに法人を持ってビジネスを運営するにはどのような方法がありますか?
Sam ガーンジー内に取締役やスタッフを揃えてビジネスをするのが理想的ですが、始めたばかりで小規模な場合などは私たちコーポレイト・サービス・プロバイダーが取締役となり法人の管理を行う事もあります。
Q. それは助かりますね。コーポレイト・サービス・プロバイダーはガーンジー内に多くありますが、多くの企業でそのようなサービスを提供しているのですか?
Trevor 実際には少ないです。どんなビジネスなのか、ビジネスの実態があるのかを正しく判断しないとリスクがありますからね。多くのコーポレイト・サービス・プロバイダーは引き受けないと思います。
Q. でも御社ではそのサービスを提供していますよね。どのように行っているのですか?
Trevor 私たちは形式だけで判断しないようにしています。例えば株主が遠く離れた日本だからリスクがあるとか、ハイリスク国だからダメだとか、そのような判断はしません。ビジネスの実態を見て、UBO(実質的支配者)の情報を詳しく調査し、その上でリスクを独自に判断します。黒か白かではなく、リスクを全体的に見て許容範囲内かどうかを判断しています。
Sam 例えば、UBOの方がどのようにしてその投資資金を得たかなども重要になってきます。アンチマネーロンダリングレギュレーション上とても重要です。
テロリズムに関わっていないかどうかも場合によっては確認します。
Q. 法人設立時にかなり詳細なチェックを行うという事ですね。他の低税率国とは違い、ガーンジーは法制度がかなり厳しめになっているわけですね。
Sam その通りです。ガーンジーは低税率国ではありますが、タックスヘイブンではありません。他国の人がガーンジーを使って税逃れをする事はできないようにルールを整備しています。
Trevor 他国に対して透明性を保つため、各国との租税条約の締結も充実しています。他国からガーンジー政府に調査依頼が来た場合は、ガーンジー政府が他国に変わって調査を行っています。
Q. 実際にそのようなケースに遭遇した事はありますか?
Trevor はい。あります。日本ではないですが、ある国から私たちのお客様に関する調査依頼がガーンジー政府に来て、政府の方が私たちのオフィスに調査に来ました。もちろんきちんと実態のあるビジネスでしたので、法人関連書類を見せ、日々の取引状況を見せて問題なく対応できました。
Q. 税逃れができないとなると、というと変ですが(笑)、それでもガーンジーが人々を引きつける魅力は何だと思いますか?
Sam まずはやはり合法的に税負担を減らせる事が大きなメリットだと思います。所得税も低いですし、法人税は一部の業種を除きゼロ%ですし、キャピタルゲインへの課税もなく、相続税もありません。ガーンジーに身をおいて実際にビジネスをするにはとても魅力的な税制です。
Q. 他の低税率国との違いは何だと思いますか?
Trevor ビジネス環境が成熟しているという点だと思います。歴史的にイギリスと近いので金融機関は全てイギリスの大手銀行で、当然その運営もイギリス流です。金融だけではなく弁護士も会計士もハイレベルなサービスが整っていて、イギリスとほぼ同じビジネス環境です。
Q. ビジネス以外で言うと、御社はイギリスの資産家の方々の信託の受託業務を多く引き受けていらっしゃいます。これについても少し教えて頂けますか?
Sam ガーンジーにはいくつかのタイプの信託があるのですが、弊所で扱っているものの多くはプライベート・トラスト・カンパニーという家族用のものです。資産家の方々が財産を信託に移し、その信託からルールに則って受益者に資産を分配します。
Trevor この場合でも弊社は「形より内容」にこだわって運営しています。信託会社の中には受益者と会うこともなく信託管理を受託しているところもありますが、私たちは必ず各受益者と会い状況をいつも把握しています。
Sam そうしないと、信託で予め定めたルールにきちんと従った分配かそうでないかの判断が難しいのです。
Trevor 昔からの言い伝えで「受託者は良い父であれ」という言葉があります。信託を設定した人の意思を継いで、受益者の状況を見極めて正しい判断をして分配していく必要があるのです。
Samとこの会社を創業する時に、そのような“昔ながらの信託”をやろうと二人で決めて創業しました。今もその理念は変わらず運営しています。
Q. なんだか良い話ですね。日頃業務でお世話になる中で、かなり細かい情報まで聞いてくるので正直「細かいなぁ」と思っていたのですが、それにはそのような理念があったのですね。もっと早くこのインタビューをするべきでした(笑)。
Sam わかって頂けてよかったです。これからもよろしくお願いします。

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